柿生駅は、村が呼んだ駅 1927年から、駅前はまだ「途中」

最終確認日
柿生駅の南口から、バスに乗りかえる。のりばは、駅から少し離れた「暫定広場」で、駅との間に高低差もある。市が2018年にまとめた資料には、そう書かれています。
この駅は、1927年、村じゅうで負担をして呼んだ駅でした。麻生区でいちばん古い駅です。
村の駅は、100年近くで、どう変わったのか。そして、駅前が「途中」なのはなぜか。公開されている資料だけで、ビフォー→アフターを読みます。(私たちは現地には行っていません。見たようには書きません。)
犬柿生駅って、新百合ヶ丘のとなりの、ふつうの駅でしょ?
猫ふつうじゃないの。村が出し合って呼んだ駅なのよ。出し合ったものが何かは、資料に書かれていないけれど。順に話すわね。
1927年、村は何をして駅を呼んだ?
まず、ビフォーです。
1889年(明治22年)、まわりの村がまとまって「柿生村」ができました。村役場は上麻生に置かれました。いまの駅がある場所は、字(地名)で「大ヶ谷戸」。市の委託調査の報告書(日本地名研究所、2018年)は、ここを「柿生村の中心地」と書いています。
1927年(昭和2年)に小田急線が開通したとき、報告書によると、駅を呼ぶために、村の各部落が「応分の負担」をしました。お金か、土地か、人手か。そこまでは書かれていません。
その柿生村は、1939年に川崎市に入って、なくなりました。報告書の言い方では「わずか五十年間」。それでも、報告書は、いまも駅の周りに「柿生」の名のつく施設が多く残っている、と書いています。名前に愛着を持つ人が多いから、とのことです。
「柿生」の名のもとは、禅寺丸柿です。くわしくは 禅寺丸柿の記事 へ。
周りの町が変わるあいだ、駅前は?
次は、駅のまわりの変化です。市の2018年のビジョンによると、麻生区は、尾根に囲まれた農村の地域でした。1950年代の後半から、百合ヶ丘の駅と団地が整い、1974年の新百合ヶ丘駅のあとは、その周りが整っていきます。1982年に、麻生区ができました。
区の人口は、1985年の108,353人から、2015年の175,523人へ(ビジョンの人口の図)。30年で、約1.6倍です。
柿生駅の近くも、人は増えました。ビジョンが「駅近隣」とするのは、上麻生5・6丁目と、片平2・3丁目。この4つの町丁の人口は、こう動きました。
15年で、約1.3倍。ビジョンは、6歳未満の子がいる世帯の増え方も高く、「子育て世帯に人気がある地区」と書いています。
それなのに、ビジョンは、駅前をこう整理しています。道路などの基盤の整備が進まず、駅前にふさわしい市街地ができてこなかった、と。人は増えた。駅前は、そのまま。ここが、この記事のアフターの、いちばんの見どころです。
1984年から、何があった?
その駅前を整えようと、市と地元は、何度も動いています。市のページと、ビジョンから、並べます。
- 1984年11月市が「柿生駅周辺地区整備構想」をつくる(約36ヘクタール)
川崎市「柿生駅周辺地区のまちづくり」 - 1988年3月駅前の市街地再開発の準備組合ができる
同上(市の年表では「東口地区」、のちに「南口地区」と名前が変わった、と読めます) - 2007年4〜5月バスの暫定広場を使い始める。柿生町田線(駅前の区間)の事業認可を取る
同上 - 2016年6〜7月準備組合が解散し、新しい準備組合ができる
同上 - 2017年11月・2018年6月周りの住民へ、事業の説明会が2回
同上 - 2018年3月27日市が「柿生駅周辺地区まちづくりビジョン」をつくる
ビジョン - 2019年2月環境影響評価の住民説明会が2回(125人と158人が参加)。評価書の公告は2020年2月18日
川崎市の環境影響評価手続のページ - 2025年8月14日「柿生駅南口地区まちづくり会」が市に登録される
川崎市「柿生駅南口地区まちづくり会」
最初の準備組合のあとのことを、ビジョンは、こう書いています。再開発へ向けた取り組みを進めてきたが、権利をもつ人たちの合意づくりが進まず、事業にならなかった。そして2016年に、準備組合は生まれ変わりました。
なぜ合意が進まなかったのか。その中身は、公開の資料からは読めません。ここは、私たちには書けません。
計画は、どんな建物だった?
2018年12月の評価結果によると、計画は、地上30階・地下1階。延べ床面積は約37,500平方メートル。商業施設、子育て支援施設、都市型住宅などを入れる、という内容でした。着工は2021年4月、竣工は2024年10月の予定、とあります。
その予定の年は、もう過ぎています。いまの予定を示す公式の資料は、探しましたが、見つけられませんでした。
わかるのは、2025年8月に、駅の南口側の地区で「まちづくり会」が登録され、活動の目的に「柿生駅前再開発事業と併せて」商業施設の充実などを図る、と書かれていることです。計画は、少なくとも2025年の市の資料では、まだ生きています。
「遅れている」とは、決めつけません。事情は、公式の資料から読めないからです。確かなのは、区でいちばん古い駅の駅前が、1984年から40年あまり、「これから」の欄にのっている、ということです。
「途中」の駅前は、いま、どんな姿?
ビジョン(2018年)は、駅前の課題を、4つ書いています。要点を、そのまま並べます。
- 南口には古くからの商店街があるが、生活に必要な店が少なく、にぎわいが下がっている
- 南口の駅前広場は、送迎の車が長く停まり、タクシーの通行のじゃまになる時間がある。バスは離れた暫定広場で、駅との高低差もあり、乗りかえしにくい
- 駅のそばに踏切が2つあり、朝夕は遮断時間が長い。通学路でもある
- 南口には、1981年(昭和56年)より前の木造の建物が多く、災害のとき、逃げる道や集まる場所をつくりにくい
おもしろいのは、同じビジョンに、こうも書かれていることです。秋の禅寺丸柿まつりなどで、駅前広場は、非常に多くの人でにぎわう。一方で、イベントを開けるスペースや、人がくつろげるスペースが足りない。人が集まるほど、広場のせまさが見える駅前です。
北口についても、ビジョンは、平面の駐車場などの空き地が多いこと、駅に背を向けて建つ店があることを挙げています。南北の線路をまたいで、一体のにぎわいが形成されていないとも書いています。
それでも、使われている駅
最後に、いまの数字を見ます。小田急電鉄が公表している、2025年度の1日の乗り降りの人数です。
- 新百合ヶ丘 117,280人1974年に開業
- 柿生 34,593人1927年に開業。7駅の2位。小田急70駅の中では31位
- 栗平 23,235人1974年に開業
- 百合ヶ丘 21,003人1960年に開業
- 五月台 10,025人
- はるひ野 9,898人
- 黒川 9,161人
開業がいちばん古い駅が、使われ方で、区の2番目。2番目に古い百合ヶ丘は4位です。古さと乗り降りの多さは、結びついていません。
ビジョンの予測では、駅近隣の15歳未満の人口は、2015年の1,151人から、2030年の1,581人へ増える見込みでした。区全体は、23,718人から21,884人へ減る見込みです。これは2018年の予測です。実際にその通りになったかは、確かめられていません。
1927年に村が呼んだ駅の近くで、いま、子どもの数が増える予測が出ていること。区全体は減る見込みのなかで、柿生駅の近くは増える、と市の2018年の資料は書いています。(予測で、実際の数字は確かめられていません。)
3問クイズ あなたは解けた?
Q1 柿生駅を呼ぶために、村の各部落がしたことは?
「応分の負担」です(日本地名研究所の報告書)。何を負担したかは、書かれていません。
Q2 駅前の再開発の準備組合が最初にできたのは、何年?
1988年です(川崎市)。1984年の構想から、4年後でした。
Q3 計画の着工予定(2018年の評価結果)は、いつだった?
2021年4月の予定でした。竣工は2024年10月の予定。いまの予定は、公式の資料では確認できませんでした。
次の一歩
駅の南口に立つことがあったら、バスの暫定広場と、駅の間の高低差を、見てみてください。市の資料が書いた「途中」が、自分の目で確かめられます。駅前の最新の動きは、市の「柿生駅周辺地区のまちづくり」のページと、まちづくり会のページに出ます。
この駅のとなりや、周りの話は、こちらへ。
- 駅の名前と地名のなぞ:「新百合ヶ丘」は、住所にない
- 区の7駅を、同じ物差しで:麻生区の7つの駅を並べてみた
- 駅からのバス:麻生区のバスの使い分け
- 秋の催し:麻生区の秋、10月〜11月のお出かけカレンダー
- 町の一覧:上麻生 片平 駅の一覧:柿生
出典
- 川崎市「柿生駅周辺地区のまちづくり」(2018年8月14日更新。主な経過)
- 川崎市「柿生駅周辺地区まちづくりビジョン」(2018年3月27日策定。経過、人口の図、人口推計、現状と課題)
- 川崎市「柿生駅前南地区」(評価結果)/同 評価結果の概要(PDF)(評価日2018年12月6日。階数・延べ床面積・着工と竣工の予定)
- 川崎市「313 柿生駅前南地区施設建築物建設計画に係る環境影響評価手続」(住民説明会、評価書の公告)
- 川崎市「柿生駅南口地区まちづくり会」(登録は2025年8月14日。公開2025年8月15日、更新2026年4月30日)
- 川崎市「事業路線情報(柿生町田線柿生駅南口工区)」(事業認可2007年5月15日)
- 川崎市委託事業報告「川崎市北部 多摩区・麻生区の町名の移り変わり」(日本地名研究所、2018年)(上麻生の項。柿生村、駅の場所、村の負担)
- 川崎市麻生区「麻生区役所のあゆみ」(2024年3月27日更新。駅の開設年、柿生村の編入、各駅の開設年、区の誕生)
- 小田急電鉄「駅別乗降人員」(2025年度)
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